【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
遠めにランティスの姿が見える。
今日も、すぐにメルシアの姿を見つけたらしいランティスが、軽く手を振って甘く微笑んだ。
会場のざわめき。そして、本日はすぐに会場の視線が噂の令嬢メルシアに集中する。
「うふふ。見せてあ~げない」
メルシアと幾多の視線の間に、体を割り込ませたアイリス。
おそらくそれは、アイリスなりの気遣いと、ランティスに対するちょっとしたいたずらだ。
「それにしても、今日は主要メンバーが勢ぞろいなのね? 立ち位置もちょうどいいわ。紹介するから、ちょっとこっちにいらっしゃい。構わないですよね? ハイネス卿」
「本日は、護衛として来ておりますので、すべてメルシア様に判断は委ねられております」
「…………そ。それなら、好きにさせてもらうわ。メルメル、一緒に行きましょう?」
「えっ、お仕事中に迷惑なのでは」
「紹介してもらいたくて、うずうずしているわ。それに、フェイアード卿のあんな不機嫌そうな顔、滅多に見られないもの」
メルシアには聞こえないようにつぶやいたアイリスの言葉の後半。
耳の良すぎるランティスと、読唇術を心得ているハイネスには筒抜けだ。
だが、アイリスはそれがわかっていて、特に気にする様子もなくメルシアの手を引いた。