【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。

 ほどなく、ランティスから離れた位置で、後輩への指導を行っていた騎士たちの目の前にメルシアは立っていた。

(あ、あわわ。バーナー様に、カルロス様、ディン様まで、ランティス様直属の部下お三方勢ぞろい?!)

 もちろん、メルシアの一推しはランティスに他ならない。
 けれど、ランティスとともに戦う王立騎士団、とくに白銀隊のメンバーは箱推しなのだ。
 とくに、ランティスの直属部下は、騎士団でも立ち絵の人気が高い。

(わわ……。ランティス様とベルトルト様が一緒にいらっしゃらないにしても、お三方が勢ぞろいするなんてめったに見られないわ!)

 小さく震えながら、瞳を潤ませたメルシアに、三人の視線が集中する。

「フェイアード卿の婚約者。メルセンヌ伯爵家のメルシア様よ!」

 なぜか自慢げにメルシアを紹介したアイリス。

「あ、あの……。メルシア・メルセンヌと申します。あの……本日はお時間を頂きまして」
「はっ。あの、フェイアード卿の婚約者なんて、どんな鉄の女かと思ったら、可愛いじゃないか!」
「あっ、バーナー殿。失礼ですよ! お許しくださいメルセンヌ伯爵令嬢。あの、僕はディンと申します。名字はありません」
「は……。ディン様。あの、弓の腕が素晴らしく、長距離射撃訓練では、全ての的の真ん中しか射止めないほどの腕前に、いつも感激しておりました」
「え?! 恐悦至極です」
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