【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。

 それは、貴族的でありながら、あまりに模範的な騎士の礼だ。

「祭典での剣舞……。あまりに美しく、目が離せませんでした。ブロンセ卿……こちらこそ、よろしくお願いいたします」

 メルシアの礼は、完璧な美しさだが、小さな体も相まって、どこか小動物のようでもあり可愛らしい。
 そして、未来の夫の直属の部下すべてを正確に覚えている様子に、周囲は感銘を受けていた。

 事実を知っているアイリスは、「推し活知識がいかんなく発揮されているわねぇ」とつぶやいて少しだけ口の端を緩めていたけれど。
 一方、同じく事実を理解しているハイネスは、表情を変えることもなくメルシアの後ろに直立不動で立ったままだ。

 もちろん、メルシアは知らない。推し活の知識で、ファンとしての感動を伝えただけのつもりが、未来の侯爵夫人として周囲の評価を上げてしまったなんてことは。
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