【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。


「そういえばその箱、差し入れかしら?」

 可愛らしくリボンが結ばれた箱は目立つ。
 白い箱に結ばれたリボンは、透けるようなほんの少し緑がかった金色をしている。
 水筒も抱えて両手が塞がったメルシアが、アイリスに視線を向ける。

「ふふっ。そろそろ、限界よね? どれ、開けてもいいのかしら?」
「……えっ、これはその」

 ランティスに直接渡すように言われているメルシアは、慌ててしまう。
 気がつけば、メルシアの持つ箱に、全員の視線が集中していた。

 その時、急に箱と水筒を持つ手が後ろから大きな手に捕まれた。
 驚いて見上げるたメルシアの視界に、ランティスのさらさらした白銀の髪が飛び込む。

「ランティス様!」

 どう考えても、訓練が始まって間もないのに、この場に来てしまったランティス。
 現状では、メルシアと一緒にいるとランティスは30分ほどで狼に姿を変えてしまう。
 これでは、訓練にならないではないかと、メルシアはひそかに心配した。
< 166 / 217 >

この作品をシェア

pagetop