【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。

「…………悪いが、この差し入れはメルシアが俺に手渡してくれる約束だから」
「あらそう。結構、我慢したわね」
「――――アイリス殿」
「あら、ハイネス卿。そうね、あまり揶揄うのは良くないわね。楽しかったけど」

 そう言って少し離れたアイリスは、やはり軽薄な印象を受ける笑顔を浮かべた。

(でも、なんだかんだ言って、親身に相談に乗ってくれたり、いい人なんだよね……)

 メルシアからすると、アイリスは無理に軽薄な印象を相手に与えるように行動しているようにすら思えてくる。

「ランティス隊長!」

 後ろから追いかけてきたベルトルト。
 赤い髪と今日の空のような青い瞳。
 強すぎる色合いの印象は、少したれ目でいつも優しく微笑んでいることで和らぐ。

 ベルトルトと、ランティスの姿を交互に見比べながら、メルシアはクラクラとめまいを感じていた。

(ランティス様とベルトルト様、バーナー様、カルロス様、ディン様)

 メルシアが心の中で思わず唱えてしまったのは、ランティスと戦場で行動を共にしている白銀隊の騎士達の名前だ。
 それぞれがその高い能力ゆえに、常時なにかしらの請け負っていることや、ランティスとベルトルトが、それぞれ分担して隊長業務を行っているせいで、戦場以外で全員がそろうことはまれだと言われている白銀隊。

(その白銀隊の主要メンバーが全員訓練場に揃っているなんて、なんて素晴らしいの!)
< 167 / 217 >

この作品をシェア

pagetop