【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。

 会場にいる婦女子の視線も、五人の動向にすべて向けられているようだ。

(一生の思い出にします!)

 感動のあまり、頬を紅潮させて、今日も瞳をが潤んでしまったメルシアの頭頂部が不意にトントンと、軽いリズムで叩かれる。

「…………はっ」
「メルシア、あまり時間がないから、執務室に行こう?」
「ベルトルト、ハイネス。訓練の再開を」
「……………ハイネスさんも?」

 とたんに、ベルトルトをはじめ四人の空気が、ピリピリと刺すような緊張を帯びる。

「は、そうですか。久しぶりですね、覚悟はできておられますか?」

 ベルトルトが抱えていた模擬剣を一本手にして、メルシアに背を向けたハイネスが明らかに笑った。

「は!」

 四人の声が重なる。
 メルシアが、今後の展開に注視しかけたところ、優しく、けれど否応なく手を引かれ、ランティスのそばに引き寄せられる。
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