【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。

「じゃあ、私は研究に戻る……え?」
「アイリス殿も、苦手な身体強化魔法の訓練をされたほうが良いと思います。戦場で、魔法の効かない敵に出会うというのは、よくあることですので」
「え? ハイネス卿? 私は……」
「問答無用」

 おそらく、それが素のハイネスなのかもしれない。
 それとも、職務に忠実すぎるゆえのことなのか。

「あの……。ランティス様?」
「ハイネスは、元副団長の地位にいて、俺の父を補佐していた。魔獣討伐戦への参加が訳あって難しくなったため現役を引退したが、今も腕は確かだ」
「あの……」
「っ、言いたいことは、分かっているつもりだ! 我慢できなかったんだ、メルシアが部下たちをうっとりと見たりするから」

 我慢できずにメルシアの口から小さな笑い声が漏れ出す。
 たしかに、うっとりと見ていただろう。
 だって、ランティスの部下なのだ。それだけでも、メルシアが応援するには十分すぎる理由だ。
 走って来たランティスの姿を見ることは出来なかったけれど、きっとラティのような勢いで走ってきてしまったに違いない。

「ランティス様が、いつも真剣に職務を全うしていること、知っていますよ」

 メルシアは遠目ではあっても、いつもその姿に声援を送っていたのだから。
 そして、今日はあんなに憧れていた記念すべき日だ。
< 169 / 217 >

この作品をシェア

pagetop