【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
「ランティス様、差し入れのクッキーと飲み物……。よかったら受け取って頂けませんか?」
周りから見れば、婚約者に差し入れをしている姿にしか見えないだろう。
もちろん、それは事実で、そのこともメルシアにとって、幸せでうれしいことだ。
でも、この差し入れの意味合いは、それだけではなくもっと大きい。
「――――ありがとう。メルシアから差し入れをもらえるなんて、うれしい」
ランティスが笑う。その笑顔に会場の視線は釘付けで。
さらに、いつもの冷たい表情と視線になれてしまっている騎士たちの視線は、違う意味合いでもっと釘付けで。
そんなことに気がつくこともないメルシアとランティスの周りだけ、違う空間のように甘い空気が流れている。
「はい! 憧れのランティス様に、差し入れを受け取って頂けるなんて、最高に幸せです!」
「………………ん?」
ランティスは、何かが違うと感じたが、それ以上追及することは出来なかった。
時間もないことだと諦め半分、可愛いメルシアをほかの人間の目に触れさせるのが耐えられないのが半分。
「行こうか……」
「はい!」
ランティアとメルシアは、惚気と混乱を残して、会場を去っていったのだった。