【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
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執務室は、隊長というだけでなく、フェイアード侯爵家の嫡男に相応しく設えてあるのだろう。豪華な造りだった。
「すごい、奥にも部屋があるのですね」
「……仮眠室だ」
「そうなのですか? なるほど、お忙しい騎士様は、帰れない日だってありますよね」
どこかウキウキと楽しそうなメルシア。
そんなメルシアを見つめるランティスも、表情を和らげた。
「でも、私なんかが入ってよかったのですか?」
「許可を取っておいた。問題ない」
当たり前のように告げられた言葉。
メルシアは、ランティスを見つめ返す。
「えっと、あらかじめ許可を?」
「ああ。メルシアが、見学に来ると言っていたから、取り急ぎ。それに、仕事を再開したばかりだ。午後からは、有給を取っている」
メルシアは、嬉しい反面、ランティスの気遣いにようやく気がついたことを反省した。
(いつもそう。知らない間に、ランティス様は、私のために色々としてくれている)
「あ、仕事中の俺を見に来たのに、余計なことをしただろうか」