【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。

 引き寄せた腕のせいで、少し斜めに傾いたランティスの体。
 メルシアは、めいっぱい背を伸ばして、ランティスの頬に口づけする。

 人命救助だと、言い訳できた前回と違い、今のメルシアには、これが精一杯だけれど。

「好きです。でも、これからは、私もランティス様のために、もっと色々したいです」

 ランティスは、頬を押さえたまま俯く。

「…………俺はただ、メルシアがそばにいてくれるだけで、十分だ」
「欲がなさすぎます。でも、私がしたいんです!」
「そう、それならば…………。はあ。もう時間か」

 あっという間に過ぎる時間。
 目の前には、真っ白な毛並みを輝かせたラティがいる。

「……もっとランティス様のことが、知りたいです」
「ワフ」
「かわい……。ランティス様が、世界で一番好きです」

 すり寄って来たラティに、メルシアは思いっきり抱きついた。
 ランティス様と、呼ばれてもラティはもう、怒ることもなく、ただ鼻先をすり寄せてくるだけだった。
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