【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
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しばらく、ラティと戯れていたメルシアは、ふと我に返る。
口の周りもベトベトだ。
(白粉だけは、頑なに拒否して正解だったわ)
侍女たちは残念そうだったが、化粧は最小限にしてもらっている。
(あれ? 顔をなめられる前提)
つまり、そうなるのが当たり前だと、どこかで思っていたことにメルシアは赤面する。
「あの、ランティス様?」
いつのまにか、目の前に現れた美貌の騎士は、少しだけいじけてしまったようにも見える素顔を、すぐに無表情で取り繕い、黙ってメルシアの顔をハンカチで拭く。
「本当に、無防備だ」
「えっと」
けれど、それをしてきたのは、ランティスだと抗議しかけた口をつぐむメルシア。
「……あの、ランティス様とラティは、同じなのですよね?」
「……え?」