【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
記憶が共有されている。
そして、最近はその行動も重なり合ってきた。
けれど、その質問にランティスの顔が密やかに歪められる。
「……ずっと、俺ではないと思っていた」
「ランティス様」
「認められなくて、人ではないのだと思い知らされるようで」
そうだとすれば、メルシアがラティにしてきた行動は、ランティスを傷つけてきたのではないだろうか。
「あのっ」
だが、軽く振られたランティスの首が、メルシアの謝罪を拒む。
そして代わりに向けられたのは、複雑な心境を残したままの微笑みだった。
「……だが、メルシアの本音を聞いたあの日から、狼の姿も悪くないと、ほんの少し思うようになった」
「……え」
メルシアを柔らかく抱きしめる両手。
そこにはもう、戸惑いはない。
そのまま、白銀の前髪がふれるほど耳元近くに口を寄せてランティスが、メルシアに告げる。