【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
「今は、メルシアのそばで、沢山のしがらみを捨てて、ただ好きだと伝えられる時間が、好きだよ」
「っ、ランティス様」
「たぶん、メルシアが、俺と狼姿のラティを、同じだけ好きだと言ってくれるから。だから、俺は狼になることも受け入れられそうだ」
言葉をかけられた耳元から、ゾワゾワと熱が全身を支配していく。
ランティスとラティは、同じ人間なのに、ランティスにとっては違った。
「そ、それなら。私がラティに抱きつくのに」
「我ながら嫉妬していた。でも」
「でも……?」
「今は、素直にうれしいと思う気持ちを受け入れることにした。だから、今までみたいにしてくれて構わない」
お許しがでて、嬉しい反面、メルシアの心中は複雑だ。
(えっと、ラティ相手だからできたことを、ご本人から改めてお許しいただくと、逆に)
先ほど舐められた頬があまりに熱い。
当たり前のように抱きついていた、腕も。
真っ赤になってしまったメルシアを、少し楽しそうに見つめるランティス。
「その代わり、少しでいいから俺に翻弄されて?」
「あ、う……」
(されてます!)
そんな言葉、もちろん今のメルシアが、口に出す余裕なんてとてもない。