【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
光魔法と夜の住人
(このまま、翻弄されてしまうのかな)
強い緊張感。けれど、その感覚は決して不快なものではない。
抱きしめられているせいなのか、ランティスがくれたものだからなのか、メルシアにはわからないのだけれど。
「お待たせぇ!」
その瞬間、勢いよく扉が開いて、慌て過ぎたメルシアは、ランティスを思わず押しのけて距離をとってしまった。
「……あら、やっぱりお邪魔しちゃったかな?」
「アイリス」
「それにしても、ハイネス卿の訓練は相変わらず過酷だよね」
いつもきっちりと、くくられたポニーテールが乱れているところを見ると、厳しい訓練だったのだろう。
そして、ほかの騎士達はいない。つまり、アイリスだけ上手く抜け出してきたに違いない。
「それで、用はなんだ」
「相変わらず、フェイアード卿はつれないよね?」
「…………」
「……少しだけわかったよ。メルメルが巻き込まれた事件」
その瞬間、ランティスが殺気立ったのが、メルシアにすらわかった。
ランティスがメルシアを傷つけることはないと理解しているから、怖いとは思わないにしても。