【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
「…………あ。そうそう。忘れかけていたね。メルメルが巻き込まれた事件、私と関連ないとは言えないんだ」
「――――ロザリス公爵家」
「…………シンが所属していたのは、私がいた場所と同じだった」
「そうか」
「気になることが二つほどあるんだ。聞いて欲しいけど……」
アイリスが珍しく言葉を濁らせた。
ちらりとメルシアに向けた視線から、おそらく聞かせたくないのだろうことが察せられる。
アイリスとシンが所属していたという場所に関連するのか、それとも別の件なのか。
「あの、私」
「すまないが、隣の部屋で待っていてもらえるか」
「はい」
気になるのだとしても、騎士団の二人が話す内容だ。
いくら婚約者なのだとしても、部外者であるメルシアに聞かせたくはない内容も勿論あるのだろう。
メルシアは、素直に納得して部屋を出ようとする。
「あ、待って」
「……アイリスさん?」
今日も詰め襟の留め具を外して広く開いたアイリスの胸元。
そこから、黒い霧を纏っている以外は可愛さしかないリスが現れる。
「護衛。一応連れていって」
リスはぴょこんと飛び跳ねると、メルシアの頭の上に乗った。