【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
ランティスの執務室の隣は、応接室になっているようだ。
向かい合ったソファーの間には、つやつやの質感の木製のテーブルが置いてある。
「……君は、なんていう名前?」
「クルッ!」
メルシアの頭に乗っていたリスは、肩に飛び降りた後、勝手知ったる、とでもいうようにメルシアの指先までちょこちょこと走った。
「ふふ。可愛いね?」
一般的に言えば、黒い霧をまとったリスなんて、恐怖の対象なのかもしれないが、メルシアが怖がる様子はない。
幼い頃から、魔獣の脅威と隣り合わせだったメルシアにとって、黒い霧はそれほど気にならず、リスの可愛らしさだけが目に入っているようだ。
「わぁ。私一度でいいから、リスをこんなふうに手に乗せてみたかったの」
「クルゥ」
メルシアが笑うと、軽く尻尾をふったリスは、手の上でちょこんと座った。
「賢い……!」
「…………それ」
「ひっ?!」