【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
急に背後から声をかけられて、メルシアはおそるおそる振り向いた。
そこには、アイリスとお揃いの黒いローブをまとった、騎士服を着た男性が立っていた。
「あ、あの」
「………………手なずけるなんて……」
「えと……」
ローブについたフードを目深にかぶっているため、顔は良く見えない。
ぼそぼそとしゃべるため、その低い声は少し聞き取りづらい。
(騎士団の制服を着用している。アイリスさんと同じローブということは、魔道士の方かな自己紹介したほうがいいのかな……)
「あの、私……」
自己紹介しようとしたメルシアの手の上で、リスがしっぽを振り回しながら、「キュルルウ!」と甲高い鳴き声を上げる。
その直後、扉が勢いよく開いてアイリスが飛び込んで来た。
そのまま、メルシアの前に立つと、目の前の男性に敵意を含んだ視線を向ける。