【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
扉が開く。
そこに立っていたのは、顔をひどく青ざめさせ、珍しく震えているアイリスと、フードを外して赤い瞳を煌々と燃やしているようなマーシスだった。
「……今の魔力」
言葉少ないまま、マーシスはランティスの目の前にしゃがみ込む。
「……ロザリス公爵家が、動いたの? でも、フェイアード卿、あの部屋は、内外の魔力が通らないはず」
「……座標のようなものをつけられていたのだろう。だが、日常的にターゲットの近くにいた人間の手引きがなければ、不可能だ」
赤い瞳は、憎むべきものを語る時のように歪められた。
「……あの時と同じだ。メルセンヌ伯爵領が襲われたあの時と」
「……ワフ」
メルセンヌ伯爵領が、魔獣に襲われた災害は、不審な点が多い。まるで、何者かが綿密な計画をもとに狙ったかのようだった。