【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
「……ふふ。せっかくくれた情報だったのに、敵のほうが上手だったわね?」
「――――すまない」
「謝っている暇があったら、さっさと助力を依頼してきて? ちょうど、部下四強がそろっているのだから。先代副団長殿までいるなんて、メルメルには天運でもあるのかしら?」
間違いなく、部下最強はベルトルト・シグナー卿だろう。
フェイアード卿の部下ではない、だが、四強の最弱にはなりたくないと、なぜかマーシスは思った。
「……ほら」
「――――死ぬな?」
「ふふ。戻って来たメルメルとフェイアード卿を揶揄うまで死なないわ」
走り去っていく、マーシスの後ろ姿を見送って、よろめきながらアイリスは立ち上がった。
ずいぶんとランティスは苦戦しているようだ。クルルクが、鉄の匂いをはらんだ幻臭とともにその情報をアイリスに伝えてくる。
「…………間違いない。そこに、あの子たちもいる」
シンが所属していたのは、ロザリス公爵家の暗部だ。
そしてそれは、かつてアイリスが育った場所でもある……。
黒髪の闇魔法遣いの子ども達は、お互いの信頼と親愛を足枷に逃げ出せずにいる。