【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
闇属性の魔法である転移魔法を発動した人間。
魔法が届かないはずのメルシアのことを正確にとらえるには、長い時間をかけて印をつけていく必要がある。
「その子も、メルメルの純粋さにほだされちゃったに違いないわ」
メルシアが騎士団にいる時に、転移魔法を発動したのは偶然などではないだろう。
命令に一部だけ背いて、公爵家を欺いた。
彼女は間違いなく、アイリスと同じ境遇だ。
「――――王家のスペアであることを忘れた悪魔」
騎士団の力と、研究で得た資金を使って、探し続けても見つけられなかった場所が、アイリスの目の前にある。
どうすることもできなかったとはいっても、仲間たちや年の離れた同じ境遇の子ども達を置いて、自分だけ、光の当たる場所に来たことをずっと後悔し続けてきた。
軽薄な笑顔で、本心と出自を偽って、秘密裏に調べ続けるため誰も寄せ付けずに。
「そうね……。こんなことなら、もっと真剣に身体強化の訓練をしていればよかった」