【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
「……どうやって」
「……特級は上級より上だから」
「――――口数少ない癖に嫌味な男」
頬を膨らませたアイリス。フードを被り直したマーシス。
その先には、身を寄せ合うまだ幼い子どもたちと、その子どもたちを背中にかばおうとする少し年上の子ども数人がいた。
「――――やっと、この場所に立てた」
「もうすぐ、ここも崩れそうだ。証拠を消す気だな」
「――――させない。子どもたちに転移魔法を」
「ああ」
次の瞬間、部屋の床全体に魔法陣が構築された。
「な、なんて無茶」
「自分がしようとしたことだろう?」
「え? 子ども達だけよ! それにマーシスは、闇魔法」
「――――得意ではない」
「命知らずなの?!」
アイリスの呆れかえったような言葉は、余韻のように部屋に響き、そして消えた。
***
そして、全てが終わりかけたその頃、ようやく白銀隊の四強は、メルシアとランティスのいる場所へたどり着こうとしていた。
「おいおい、どう見ても公爵家の暗部の本拠地だろうこれは」
「危険度一級レベルでしょうか」
「そのわりに、惨状が目を覆いたくなる感じです」