【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
推しの狼と婚約者
騎士団の公開訓練は、今日も麗しく凛々しい騎士たちの姿を一眼見ようという、婦女子たちで溢れている。
その一段から少し離れた場所に、豪華な馬車が止まる。そこから降りてきたのは、爽やかな白いワンピースを風に揺らした可愛らしい令嬢だ。
通称白銀隊隊長、ランティス・フェイアードの婚約者、メルシア・メルセンヌ。
「うわぁ……。ランティス様が、走っている」
今日は基礎訓練らしい。
ただひたすら、重い荷物を背負って走るという、簡単なようで過酷な訓練だ。
「ランティス様の体力は、こんな地道な訓練で作られるのね……。努力と流れ落ちる汗が尊い」
胸の前で両手を組んでうっとり認める姿は、まるで恋する乙女のようだ。
だが、訓練中にはランティスを決して邪魔をしたりすることなく遠くから見守り、他の婦女子がランティスを応援することを咎めもせず逆に嬉しそうにさえ見えるメルシア。