【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
「え?」
「――――あなたの旦那だわ。あの人」
推しとして眺めているランティスは、自宅にいてもふもふだったり、甘えてきたりしてくるランティスとは、別人みたいにかっこいい。
そのかっこよさは、ここにいる婦女子全員と分かち合いたいのだ。
「…………騎士のランティス様は、みんなのものですよ?」
「難しいこと言うのねぇ……。私には理解しかねるけど、まあ、メルメルが幸せそうだからそれでいいのね、きっと」
少しだけ、ランティスがかわいそうに思えてくるアイリス。
この二人は、結婚したにせよ、きちんと距離を縮めることができているのか、心配になってしまう。
ランティスから、先日の精神が狼みたいになってしまった件を相談されたアイリスだが、メルシアがこんな調子で二人の距離が近づききれていないのが原因でないのかと思える。
だが、メルシアだけが悪いわけではあるまい。
普段の冷酷とも言える騎士ランティスが嘘のように、メルシアを前にしたランティスは意気地がないとアイリスは密かに思っている。
「本人達には、言えないわよねぇ。……まあ、見ていて楽しいし?」
そう、これが推し活というものだとすれば、アイリスの推しは現在フェイアード夫妻なのだろう。