【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。

 ずいぶんと、雲の上のお方だった。

(たしか、マチルダが素晴らしく活躍して見目麗しい騎士様がいると、盛り上がっていたわ。名前は、そう。ランティス様と)

 思わず、鼻を触る。鼻血なんて見られて、恥ずかしすぎて、もう面と向かって会えそうにない。母が洗ってくれたらしいハンカチは、きれいに汚れが取れている。

 父とランティスの父であるフェイアード侯爵は、学友だったという。

「はあ。素敵な人だった……」

 ようやく落ち着いたメルシアは、すでに外が暗くなっていることに驚きつつ、美しい月を眺める。
 黄色く輝く月の色は、どこかあの瞳を思い出させた。
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