【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
本当はそばにいたかったのに
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フワリ肩からかけられたマント。
ほのかに香るのは、針葉樹と眠気を誘う穏やかな花の香り。
それは、ラティと同じ香りだ。
「メルシア」
「ん……」
「風邪を引く。メルシア」
目を擦って体を起こす。いつのまにか、陽が傾いて、少し肌寒い風が吹いている。
穏やかで甘い声。遠くから見つめていても、声だけはなかなか聞くことが出来ないから、とても貴重だ。
「とっておけたら、いいのに」
「ふ、何を」
「その、声を」
「…………」