【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
そう。例えばオルゴールにでも仕舞い込んで、この声を閉じ込めておけたらいいのに、とメルシアは思う。
そうすれば、ずっと聞いていられるのに、と。
「……メルシア」
今日は、妙に夢の続きが長い。
(こんなふうに、名前を呼んでもらえたら、どんなに幸せだろう。でも、鼻血も見られてしまったし、婚約者にしてもらっても、気の利いた会話のひとつもできなくて)
そろりと、まるで壊れ物を扱うみたいに、頭を撫でられる。
ここまできて、さすがに夢ではないということを認識したメルシアは、密かに冷や汗をかきながら目を開けた。どこからが、現実なのだろう。
(寝起きに、聞いて欲しくないような寝言を口走った気がするよぉ)