【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
「……ランティス様」
「こんなところで眠ったら、風邪を引く。さ、馬車を用意したから、乗るといい」
肩にかけられていたのは、ランティスのマントだった。しっかりした生地で作られて、耐魔法の機能がついているから、ズッシリと重みがある。
「あ……。私、勝手に上がり込んだ上に」
以前だったら、「気にすることはない」と、そっけない返事が返ってくるだけだった。
無表情だから、怒っているかもわからなくて、メルシアは、何度も不安になったものだ。それなのに。
(ずるい……。ずるいよ、そんな顔)
ランティスが、微笑んでいる。
こんな顔、推し活で追いかけていた時だって、婚約者として過ごした日々だって、一回も見たことなかったのに。
「来てくれてうれしかった。また、来てほしいんだ。もしも、メルシアさえよかったら」
ランティスは、いつのまにか、違う人格にでもなってしまったのだろうか。それくらい違う。それほど甘くて。