【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
離れがたいとでも言うように、名残惜しさを感じるほどに、ゆっくりと離れていく指先。
「……これで、失礼する。馬車を門の前に止めてあるから」
それなのに、メルシアを置いて行ってしまうランティスは、今までと何も変わっていないように見える。
(あんな顔、見せておいて)
理解が追いつかないまま、メルシアは馬車に乗る。
「本当のことを、知らなくちゃダメなんだよね。きっと」
婚約破棄の申し出には、理由があったのだろう。
あまりに、ランティスの態度は、一貫性がないけれど、それでも、ランティスが、理由なくそんなことする人じゃないと、メルシアは知っているし、信じている。
ずっと、その姿を追いかけてきたのだから。