【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。

 そして、まだ肌寒さの残る早朝、思い悩むメルシアに父から届いたのは、衝撃の知らせだった。

「――――ランティス様が、騎士団に長期休暇願いを出した?」
「ああ。ランティス殿は、今まで休みをほとんど取っていなかったから、休暇自体は問題ないのだが……。何か聞いていないか?」
「いいえ。何も」

 メルシアの父は文官で、騎士団を管轄する部署にいる。
 普段であれば、仕事と私情を混同するなど決してメルシアの父はしない。
 それでも、ランティスが長期休暇を取ったことを父がメルシアに伝えたのは、ここ数日の様子から、何か関係があると察したのかもしれない。

 たしかに、数日前のランティスの様子はおかしかった。
 いつも無表情なのに、表情も豊かだったし、メルシアに何か伝えたいことがあったように思える。

(でも、そんな……。ランティス様が騎士団に休暇を申請するなんて、よほどの理由だわ)
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