【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。

「――――そうか。メルセンヌ伯爵家への援助の話は、なかったことにはしない。メルシアの名声を落としてしまった代償には不十分だと思うが、婚約破棄の違約金も勿論払おう」
「――――ありがとうございます」

(本当は、この半年間の、幸せ過ぎた毎日に、金額なんてつけて欲しくない)

 でも、魔獣が生まれる森が近くにあるメルセンヌ領は、3年前の魔獣の活性化以来、その対応のために資金繰りが悪い。

(遠くから、そのお姿を眺める日々に戻るだけの話だわ。私には、それくらいがちょうどいい)

 妙に、ズキズキと痛む胸に気が付かないふりをしながら、メルシアは、まっすぐにランティスを見つめ返す。

「あの、どうしてもひとつだけお願いしたいことが」
「……なんでも叶えると誓おう」
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