【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
後ろから、急に抱きしめられて、メルシアの心臓は、跳ねて飛び出してしまいそうになる。
けれど、安心できる香りは、その腕の主が誰なのか、メルシアに伝えてくる。
「――――メルシア」
その予想を肯定するみたいに、低く甘い声がメルシアの名を呼んだ。
「あの、ランティス様?」
「会いに来てくれたの? ……うれしいな」
やはり、ランティスは、様子がおかしい。
こんな風に、メルシアに接する人ではなかったのに。
抱きしめているランティスの腕をそっと掴んで緩めると、メルシアは、くるりとランティスのほうを向く。
(っ……思ったよりも、距離が近い?!)
頬に熱が集まってしまうのを、止めることも出来ない。
けれど、ふと見たランティスの耳元が、ほのかに赤い事に気がついて、メルシアは冷静さを取り戻す。
「やっぱり……」
「メルシア?」
「やっぱりどこか具合が悪いのですか?! 顔も赤いし、体調を崩してしまったのですか?!」
「え…………?」