【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
ランティスが去ると、入れ替わるようにラティが部屋に飛び込んで来た。
しっぽをブンブン振って、歓迎してくれているのが一目でわかる。
「わぷっ」
飛び込んで、体当たりしてきたラティに、たまらずにメルシアは後ろに倒れてしまう。
押し倒してしまったことに驚いたのか、その瞬間、壁際までラティが勢いよく下がった。
しっぽがペタンと下がってしまっている。
ずいぶん驚かせてしまったのだろう。
「――――おいで? 驚かせちゃったかな?」
おずおずと、ラティがメルシアに頭を摺り寄せてくる。
「うく。か、かわい……」
メルシアは、先ほどまでモヤモヤしていたことも忘れて、ラティとじゃれ合う。
犬と遊ぶのは楽しい。素直にお互いが好きだと伝えることが出来るから。
「……ラティ、好きだよ」
「ワフ……」
「……ランティス様にも、こんな風に気負うことなく、好きだって言えたらいいのにね」
間違いなく、メルシアはランティスのことが大好きだ。
それは、推しに向けた好きなのか、それとも婚約者に向けての好きなのか、それはわからないけれど。