【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
フェイアード侯爵家に連れ帰られたメルシアは、集まって来た侍女たちに、瞬きするほどの間にランティスのシャツに着替えさせられ、ベッドに寝かされた。
メルシアの額に温かくて大きな手が触れる。
魔力がそっと流れ込んでくるのを感じて、メルシアは少し気を抜くだけで閉じてしまいそうになる瞳を開く。
「……メルシア。命に別状はない。念のため治癒師を呼んでくるから」
「――――ランティス様」
「少し、席を外すが……」
「ランティス様……。寒い」
寒さと、上がりかけた熱と、先ほど感じた恐怖のせいで、ひどく心細くなってしまったメルシアは、ふらふらと上体を起こし、ランティスの上着の裾をつかんだ。
「怖い。行かな……で」
「……メルシア」
次の瞬間、メルシアは温かい体に抱きしめられて、押し倒されるようにベッドに沈んでいた。
まるで、ラティがそばにいる時みたいに、ランティスの体温は高い。