【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
メルシアと一緒にいると、30分ほどで、狼姿になってしまうらしいランティス。
さぞや、不便な思いをしていたに違いない。
そんなランティスだが、今はラティの姿でお行儀よくメルシアの前に座っている。
「ワフ……」
「あの、ランティス様?」
「ワフゥ…………」
さすがに愛称呼び捨ては、申し訳ないのではないかと思いつつ、ランティス様と呼んでみたところ、露骨にそっぽを向かれた。
「…………ラティ?」
「ワフ!」
しっぽがブンブンと揺れる。この呼び方が正解のようだと、メルシアは判断した。
しかし、本当にラティはランティスなのだろうか。
あまりに、犬もとい、狼になりきっているように見える。
「あの、ラティはランティス様なんだよね?」
「ワフ?」
もちろん、言葉がしゃべれないラティからの返事はない。
その代わりに、いつものように、いや、いつも以上にグリグリと頭が摺り寄せられる。
勢いがよかったわけではないけれど、あまりにグイグイ来るものだから、メルシアは再びベッドに押し倒される形で沈み込んだ。
その上に、ラティが乗り上げてくる。