【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
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メルシアとランティスが、出会ったのは、その年の冬、初めて霜が降りた日だ。
まだ、メルシアは幼くて、初対面の相手に人見知りをして、母親の後ろにくっついて離れなかった。
ランティスは、6歳になって初めて、騎士を務める父の仕事について、メルセンヌ伯爵家を訪れていた。
その頃から、白銀の髪にオリーブイエローの瞳、整った顔立ちのランティスは、美しい少年だった。
「はじめまして、僕はランティス・フェイアード。君は?」
「……メルシア」
それだけ言うと、初めて会ったランティスのことが怖かったのか、メルシアは再び母親の後ろに隠れてしまった。
ふわふわウェーブかかった淡い茶色の髪。
まるで宝石を閉じ込めたみたいな、長いまつ毛に縁どられた丸い緑の瞳。
美少女の部類にもちろん入るだろうメルシア。だが、その姿はどこか小動物を思い起こさせる。
それでも、ランティスが、メルシアに抱いた初対面の印象は、「ものすごく可愛いな?!」くらいのものだった。