【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
「――――そういえば、君の名前も聞いてなかったね」
ランティスが去った後、いつも現れるこの犬。
犬種もわからなければ、名前も知らない。
婚約者のお茶会をしていても、ランティスはほとんど口を開かないから、メルシアはランティスのことをほとんど……。
(いや、結構知っている。遠くから見て、さらに各方面から情報集めていたもの)
こんなにもメルシアがランティスのことを知っているなんてわかったら、どんなふうに思うだろうか。けれど、これは婚約者としてより、素敵なものを遠くから応援する気持ちに近いのだ。
ギュッと、その太い首に腕を絡めて抱き着く。
あとからあとから、零れ落ちてくる涙。
「意外に……ものすごくショックだったみたい。平気なふり、できていたと思う?」
「クゥン……」