【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
二人の騎士
「あの頃、メルセンヌ領は、とても危なかったのに。どうして、わざわざ」
「……その場所に、メルシアがいると思ったら、居ても立っても居られなかった」
「……私は、元気でしたよ?」
「知っている。遠くから見ていたから」
メルシアがいたのは、メルセンヌ領の中心地だ。激戦の地となった、北部に比べ安全だった。
メルシアは、その頃から光魔法を本格的に使い始めた。
傷ついた騎士や領民たちを、少しでも癒したくて。
当時、光魔法を磨いたおかげで、それが毎日の糧になっている。
(人生って、わからない)
そう、わからないのだ。
こんな風に、ランティスとメルシアが、一緒にいられる、奇跡みたいな時間が訪れたように。
「……今は、騎士であることが俺の誇りだ。でも、初めは不純な動機だった。推しというものが、どういうものなのかは、未だわからないが、俺はきっと、理想の騎士ではない。……幻滅させただろうか」