【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
「ランティス様?」
メルシアが、瞳を瞬きすれば、まるで眩しいものでも見たかのように、ランティスが、オリーブイエローの瞳を細めた。
「……騎士になって良かったと思っている」
「……それなら、良かったです。あと……魔獣が、紛れ込んで来て襲われそうになった時、何回か助けてくれましたよね」
「……なんのことかな」
(今更、隠すこともないのに)
今ならわかる。あの当時、ランティスに、メルシアは、何回も助けられたのだ。
その度に、名前を名乗ることもなく、すぐにいなくなってしまったけれど。
街中なのに甲冑姿だった上に、一言も喋らなかったから、少し変わった騎士様だな、とメルシアは、思っていた。
その騎士が、まさかランティスだなんて、夢にも思わなかった。
「事実、半分は俺だが、残りの半分は」
「え、半分?」
「……はぁ。あいつ、このタイミングで来たか」
二人のいた部屋の扉が、勢いよく開いたのは、ランティスが、ラティの姿になったのと、ほぼ同時だった。