【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
なんだか、会話が成り立っているようで、二人の絆を感じるメルシア。
騎士団で、人気を二分している二人。もちろん、ランティス推しのメルシアだが、二人が並んでいる姿を遠くから見るのは好きだった
「それに、俺があんなに言った時には、頑なに休みを取らなかったのに、いきなり休むなんて。さっさと、人間の姿に戻ってもらえませんか?」
「…………」
「ふざけていないで……」
ツイッと視線を逸らしたランティスのそばに、ベルトルトが言い聞かせるみたいにしゃがみ込んだ。
そして、何かに気がついたように、瞳を見開く。
「――――え? まさか」
「…………」
「自分の意思でないのですか。その姿……」
「…………」
ベルトルトは、その火傷しそうなほどに赤い髪の毛をぐしゃりとかき上げた。
チラリと、メルシアのほうをみて、心を落ち着けようとでもいうように、少しだけため息をつく。
「なるほど、合点がいきました」
「…………」
そのまま、青い瞳がメルシアのほうを向く。
優しげに笑ったのに、ベルトルトに瞳は、深刻な色を宿しているように見える。
「――――メルシア様」
「はい」
「ちょっと、借りていきます」
「――――え? はい」
黄昏た様子のラティと、ほほ笑んだままなのに、目が笑っていないベルトルト。
二人が去った後の部屋は、急に静まり返ったのだった。