【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
(――――とても本人には、見せることが出来ないけれど。むしろ、見られたら私は!)
ひそかに悶えたせいで、プルプル小動物のように震えているメルシアを見つめていたランティスが、ふと引き結ばれていた口元を緩めた。
「――――可愛い。昼食をとって、ゆっくりしているといい。そうそう、侯爵家には大きな図書室がある。もしよかったら」
「と……しょしつ」
「そう、もしよかっ」
「いいのですか?!」
ぴょんと飛び上がる勢いで喜ぶメルシア。勢い余ったメルシアに抱き着かれたランティス。
メルシアが、本が大好きなことを、ランティスは知っていたらしい。
「あっ、ごめんなさい!」
「いや、俺は……」
また、無口なランティスに戻ってしまったらしい。
それでも、今のメルシアが、そのことを嫌だとか、つらいとか思うことはもうない。
婚約者のお茶会での沈黙は、あんなにつらく感じたのに。