【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
(きっと、いろいろな表情を知ったから。それに、ランティス様は、思っていたより口下手なのだわ)
それに加えて、ラティの素直な愛情表現が、メルシアにランティスの本当の気持ちを教えてくれているような気がした。
だから、きっと本当にしゃべることが出来なかっただけで、嫌われていたわけではないのだと、今ならメルシアにもよくわかる。
ここ最近になって、メルシアを褒める時のランティスは、妙に饒舌なのだが。
「――――行くか。ベルトルト」
「ええ。それでは、またお会いしましょう。メルシア様?」
一瞬、ランティスの眉が不機嫌そうに寄せられた気がしたが、メルシアの気のせいに違いない。
二人が去っていけば、再び静かになる室内。
訓練場で、二人が剣を交える時には、訓練場に黄色い悲鳴があふれかえるくらいなのだが。
「…………二人で、何の話だろう?」
おそらく深刻な話に違いない。
メルシアにだって、それくらいのことはわかる。
ただ、今しがた見た二人の姿が、網膜に焼き付いてしまって、離れてくれないから、思考に集中できないだけで。