【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。

 極上の毛並み。モフモフでつやつやだ。

「君は、ランティス様と同じ香りがする……。同じ石鹸使っているのかな」
「ク、クウン……」

 離れる様子もなく、鼻先を擦り付けてきた、モフモフの犬を抱きしめたメルシア。
 嫌がる様子もなく寄り添ってくるかわいい犬。
 それに甘えて、メルシアはひとしきり大泣きした。

「――――ごめんね。べちょべちょになっちゃった」

 そういえば、この犬の瞳はランティスと同じ、オリーブイエローだ。

「ふふ。秘密で君のこと、ランティス様って呼んでいい? ……あは、なんてね」

 こうやって、モフモフに抱き着いて、ランティスと同じ香りを嗅いでいるだけでも幸せなのに、それ以上はさすがに、誰かに聞かれたら大変だ。
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