【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。

 ベルトルトは、本人が自覚していないにしても、その立ち位置にいる。
 それは、周囲の人間すべてが認めていることで、ランティスが騎士団長に就任した時には、ベルトルトは自動的に副団長に任命されるだろうというのが周囲の見解だ。

 もちろん、ベルトルト本人に拒否権などない。
 そして、ベルトルトが、仲間を裏切るなんてことはない限り、それはほぼ決定された未来なのだろう。
 だが、ランティスは騎士であることよりも、メルシアのそばを選ぼうとしている。

「う~ん。三年間の付き合いですが、隣で見ていてヤキモキしていたから、それはそれでいいのですが。……問題は、メルシア様の光魔法ですよね」

 たしかに、ベルトルトは、メルシアの魔法だけでは、助からなかっただろう。
 街の治癒院で働くメルシアの魔力は確かにそこまで多くないし、光魔法だって初級治癒魔法しか使うことが出来ない。

 騎士団の上級魔術師を、あの時ランティスが連れてこなければ、ベルトルトは助からなかったに違いない。

< 87 / 217 >

この作品をシェア

pagetop