【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。
「大丈夫。ランティス様がお仕事の日は、遠くから見ています。だから、お休みの日には私のそばにずっといてくださいませんか?」
「メルシア…………?」
「そうですね。侯爵家の奥様としてのお仕事は……」
ふふっと、いたずらを思いついたようにメルシアが笑う。
「侯爵家の奥様は病弱設定で行きましょう! うふふ!」
「なんだそれは、ははっ」
思わず、ランティスは笑った。
メルシアは、貴族社会というものを理解していないのかもしれない。
だが、だからこそ、第三の選択肢を見つけることが出来る。
「ランティス様は、欲がなさすぎです。頑張っているランティス様は、全部手に入れたって、いいですよ? 私が許します」
「――――そうか、そうだな」
メルシアに関してだけ言えば、ランティスは欲まみれだ。
そばにいるだけでは足りなくて、もっともっとメルシアを手に入れたくて仕方がない。
ランティスは、初めてためらいなく、メルシアを抱きしめる。
残念ながら本日は、それ以上の進展なく、ランティスの姿は狼のそれになっていた。