【電子書籍化】飼い犬(?)を愛でたところ塩対応婚約者だった騎士様が溺愛してくるようになりました。

「ラティ……。とりあえず、離れていてくれる? そうね、まずは庭にいるから、部屋の窓からのぞいていてね?」
「キュウン!」
「――――ごめんね。とりあえず、私とランティス様が、どれくらい近づいてもいいものか、実験しないといけないから」
「クゥン……」

 全力で後ろ髪を引かれるほどの、哀愁を漂わせるラティに、胸を痛めながら、メルシアは庭の外へと出た。そこには、今日もお茶会の用意がされている。

 外に出ても、置いていかれたことを悲しむような「キュウン」という鳴き声が時々聞こえてきて、メルシアを苛む罪悪感が類を見ない。

(今すぐ駆け寄って抱きしめたい! でも、長期休暇といっても、いつまでも忙しいランティス様が騎士団を休み続けるわけにもいかないの。心を鬼にするのよメルシア!)

 早く推し活がしたいというわけではないのだ。
 もちろん、もう一度、推し活ができることに、心が躍ってしまっているのも、事実には違いないにしても。

 庭から3階にあるランティスの部屋の窓から、白い狼がこちらをのぞいている。
 風になびく青いカーテンと、一匹のモフモフ。
 最高に胸が高鳴る可愛らしさだ。
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