言えないまま・・・
「あはは、ハル、口の横からコーヒー出てるぞ。興奮しすぎだって!」

アキはお腹を抱えて笑った。

「もぉ。アキが変なこと言うから。」

慌ててハンカチで口をぬぐった。

ほんと、最悪!

「もちろんお付き合いしてるフリだけど、さ。」

ああ・・・。

私一人で何焦ってたんだろう。

こんなことで気持ちが大きく揺れ動く。

「直太兄のお嫁さんと恋愛する勇気は、さすがに俺もないし。」

そのアキの言葉は、胸の奥にぐさっと突き刺さった。

なんだか息苦しい。

夏紀さんはあんなこと言ったけど、やっぱりアキは私を女性として見てなんかないよ。

アキの言った言葉は、それを聞いて安心しなきゃなんないのに、なぜだか胸の奥がぽっかりと口を空けたようだった。
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