言えないまま・・・
その日、帰宅した直太は、限りなく穏やかな表情で私が送ったメールについて聞いてきた。

「優花ちゃんとこないだ会ってたけど、ひょっとしてアキを紹介してくれって言われたのか?」

さすが。

直太はそういう勘が働く。

女性的な勘を持ち合わせてる直太が時に怖くなることもあるんだ。

何もかも見透かされてそうで。

今回のことは、絶対何が何でもボロを出さないようにしなくちゃ。

「うん、実はそうなんだ。優花が私達の披露宴で見かけたアキさんに一目惚れしちゃったみたいで。直太から、アキさんの女性関係のことは色々と聞いてたからどうしようか迷ってたんだけど。」

「でも・・・、こないだうちで会ったとき、確かアキは付き合ってる人がいるとか言ってなかったっけ?」

「あ・・・」

夏紀さんのこと、そういえばアキが直太に言ってたっけ。

「うん、実はつい最近別れちゃったみたいで。それで、タイミングもいいかなぁって思って。」

直太は、「ふぅん」と言いながら腕時計をはずして、ダイニングチェアに座った。

「まぁ、あいつもきちんと誰かと向き合ったことがないだけで根は悪い奴じゃないからな。優花ちゃんみたいな真面目な女の子だったら、ひょっとしたらいい感じにくっつくかもしれないな。」

「そうだよね。きっと大丈夫だよね。」

顔がひきつっているのがわかる。

無理矢理笑顔を作って、キッチンへ引っ込んだ。
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