言えないまま・・・
直太は、「いい感じにくっつく」・・・?

なんていい加減なこと言うんだろう。

今の私には想像できないし、想像したくない状態だった。

そんな私の気持ちとは裏腹に、直太は、明らかに機嫌が良かった。

久しぶりに見る明るい直太の表情。

直太にとっては、私からアキを遠ざけるまたとないチャンスなんだよね。

きっとそれでこんなに嬉しそうなんだ。

「昨日仕事の件で電話があったアキさんにそれとなく伝えたら、結構向こうも乗り気になっちゃって、早速日曜に紹介することが決まったわけ。私一人で引き合わせてもいいんだけど、せっかくだし直太も一緒にどうかなって思って。」

「おう。全然いいよ。アキにはきちっと優花ちゃんのことは釘差しとかないといけないし。引き合わせた後、ハルと二人で久しぶりにどこかでおいしいものでも食べに行ってもいいな。」
 
私は、全くそんな気分ではないけど。

でも、普段の私ならきっと喜んで賛同するはずだよね。

「うん、いいね。またおいしいレストランでもリサーチしとくわ。じゃ、日曜は直太も一緒に行けるってことで。」

「優花ちゃんにも久しぶりに会うしな。本当なら、一緒にゆっくり食事しながら話したいところだけど、せっかくアキを紹介するんだったら、それは遠慮しとかなくちゃな。」

直太は満足そうな笑みを浮かべて、缶ビールを勢いよく開けた。

私は作り笑い。

飲みたくもないビールを一緒に飲むはめになった。
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