言えないまま・・・
早く行かなくちゃ。

叔母さんから手渡されたアキの住所と地図を見ながら、小走りに道を探す。

直太が帰ってきちゃう。

気持ちは急いていた。

少し薄暗い人気のない通り。

通りを抜けると、集合住宅が何軒か並んでいた。

その中の一つが、アキの住んでいる1ルームマンション。

マンションの前で、しばらく立ちつくす。

私。

来ちゃった・・・。

街灯の下で、地図を眺めながら、この場所が現実ではない夢のような錯覚に陥る。

現実味のないこの場所にアキはいるのだろうか。

久しぶりに会うアキは元気かな・・・。

私が一人で押しかけたら、きっとびっくりするよね。

ふ~。

深呼吸する。

なんだか体が熱い。

少し頭もくらくらする。

これも薬のせい?

慌てて走ったからかな?

アキの部屋は、2階。

階段の手すりに手をかけたその時。

「ハル?」

< 141 / 215 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop