言えないまま・・・
アキは自分のベッドに私を寝かせた。

そして、何やらキッチンでかちゃかちゃやっている。

ぼんやりとアキの姿を観察していると、どうもお茶を入れてるようだった。

湯気のたった湯飲みをベッドサイドのテーブルに静かに置いた。

ふふ。なんだかアキに似合わない。

ぼんやりとした空気に、まどろみながら、これが夢なのか現実なのかまたわからなくなる。

気がついたら、私はそんな状況の中笑っていた。

「何笑ってんだよ。少し落ち着いたら飲めよ。」

アキは照れくさそうに、またキッチンに戻った。

アキの部屋。

アキの匂いがする。

狭くて、モノも多くて、お世辞にもきれいとはいえない部屋なのに、今はとても居心地がいい。

そこにアキがいるから。

私はこんなにもアキに会いたかったんだ。

少し気を緩めると涙が出そうだった。

「ハル・・・。体大丈夫か?直太兄から聞いたぞ。」

直太から?

「優花ちゃんと会うことになってた日。俺がドタキャンした後、ぶっ倒れたって聞いた。」

アキはお茶を一口すすった。

「直太兄に言われたよ。『お前のせいで、ハルはおかしくなっちまった』ってさ。」

呼吸も落ち着いてきたので、私はゆっくりと体を起した。

手の先がピリピリとしびれている。
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